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第3章「衛教の神々と方位除け」

 

衛教の神々と方位除け】

衛教の神々とは衛教二十神(えいきょうふたそかみ)のことであり、方位除けとは最勝十一方格祝詞(さいしょうじゅういちほうかくのりと)のことです。衛教の神々は、私が当初から崇拝していた自己の創造神である移心(イシン)と山巓若(サンテンジャク)、そして自我の最高神である衛叉(エイサ)を除くと、残りの17の神は全てインドに由来する神様です。すべては、まず手天国家を守護する方位除けとして、古代都城制にも用いられ、現代にいたる「四神相応」、「天子南面」の思想の根本原理である四神が、インドに由来する興福寺八部衆に内包されている事の発見により始まりました。このことは、大相撲の天井から下げられた4つの房が、四神を顕していて、その科学的根拠としては、平城京が奈良市に、平安京が京都市へと千年を超える都として現代まで繁栄していることからも自明です。次に興福寺を含めた天竜八部衆は二十八部衆から選抜された神であり、その本尊が十一面千手の神である点。そして十一面が11の方位からの手天国家の守護を意味し、千手は1000もの手天を創造するという理想からなる、その最高神・衛叉(エイサ)が自我の信仰精神と合致した事。そして八部衆神首座の五部浄神に内在する大自在天はシヴァ神であり、その別名が伊舎那天(イシャナテン)とされ、伊邪那岐命と伊邪那美命とのモデルである事の発見などから、インドの神々が最勝の守護神になると確信したからなのです。ただし科学的に来世の存在を認めない衛教は、神々を輪廻転生やバラモン教・ヒンドゥー教・仏教から解放いたします。

また方位除けは衛教祝詞と衛叉祝詞に加え、わが祖先大江匡房卿の著書『江家次第』から属星拝礼などを取り入れながら、誰でも日々自分自身で行える最勝のものを完成させています。そして決断の岐路に立った時に自ら御神託を頂戴する方法に関しても記載しています。神との対話に使用する佐取卑文字は、1974年から衛教創始教主が、万国共通の文字であるアルファベットと最も親和性があり、日本人にも判別しやすい文字構成と類似した発音を有する、ギリシャ線文字Bとルーン文字とを参考にしながらも、科学的にも文字の構成要素の本来の意味に矛盾なきように、衛教の文字として作成したものです。佐取卑文字自体の意味に関しても、「あ」からは身近なタイトルから始めながら、「わ」、「を」、「ん」に向けては大きな観念をタイトルとするように改編を繰り返しながら、2009年4月10日に御神託を頂戴する神代文字として完成したものです。そうして2018年7月13日に御神託を頂戴する衛教の特殊文字と定められました。このように衛教の神々と方位除けは、すべての面に於いて科学的にも文化的にも矛盾無く、手天道を行う者にとって最強の神群による最強の方位除けなのです。

【衛教二十神】

手天道衛教の神様は「衛教二十神」(えいきょうふたそかみ)と呼称される通り20柱です。まず「衛教大神」(えいきょうおおかみ)という主祭神が3柱おられます。次に自分自身を中心にして11の方角をご守護いただく天竜八部衆の神様が15柱。具体的に述べると、天竜八部衆とは、それぞれ諸天部、龍衆、夜叉衆、乾闥婆衆、阿修羅衆、迦楼羅衆、緊那羅衆、摩睺羅伽衆の八衆を指し示しています。ところが各衆族が統合した一尊の神として顕現なされるのに対して龍衆のみは様相が異なり、統合された八大竜王であったり、またその八大竜王のリーダーである難陀竜王が代表として顕現なされたり、また八大竜王第三位である沙羯羅竜王であったりと定まっておりません。そこで手天道衛教では尊崇する興福寺八部衆の神像に従い、それぞれ諸天部は五部浄神、龍衆は沙羯羅竜王神、夜叉衆は鳩槃荼神、そして統合された阿修羅衆は阿修羅神、迦楼羅衆は迦楼羅神、緊那羅衆は緊那羅神、最後に摩睺羅伽衆は畢婆迦羅神としてご祭祀いたします。そうすると興福寺八部衆の神様に残りの八大竜王の7神を加えるので、それで15柱の神様となるのです。これを十一方格の神として崇拝いたします。なお、手天道衛教では十一方格神は同格です。そして両角(もろづの)の神様が2柱おられ、これで合計20柱の神様が勢揃いなされることになります。これに陰陽師十二天将の12の式神の役職とそれ以外の土公神(どくじん)の8つの役割とを当てはめることによって「衛教二十神」は成立しています。ただし手天道衛教での十二天将は「貴人」(きじん)、「天帝」(てんてい)、「天后」(てんこう)、「太陰」(たいいん)、「青竜」(せいりゅう)、「六合」(りくごう)、「勾陳」(こうちん)、「騰蛇」(とうだ)、「朱雀」(すざく)、「大裳」(たいも)、「白虎」(びゃっこ)、「玄武」(げんむ)です。本来一番目の「貴人」と二番目の「天帝」とは同じ式神です。そうすると「天空」(てんくう)というもともとの神様が余ってしまいます。そこで陰陽師十二天将の内「天空」という名跡(みょうせき)であったものを「天帝」に改称しているのです。一方の土公神の8つの役割とは、「居天」(ごてん)、「黄龍」(こうりゅう)が2つ「昇龍」(のぼりりゅう)と「降龍」(くだりりゅう)、「麒麟」(きりん)、「夜叉」(やしゃ)、「般若」(はんにゃ)、「両角」(もろづの)が2つ「黒角」(こっかく)と「朱角」(しゅかく)です。陰陽師的にはこの20の神様は全て式神ですが、手天道衛教では、主祭神の衛教大神を除いて残りの17の神様とさせていただきます。式神使役とは主宰者であるあなたが式神を使役することです。そしてまた、あなたの手天はこの式神を信奉しています。つまりあなたが式神を支えているのです。ですので、手天道衛教でいう式神使役とは、主宰者であるあなたと式神との共存共栄を意味することになります。また八部衆神には性別があります。例えば緊那羅衆の場合、男性神がキンナラであり、女性神がキンナリーと呼称されています。龍衆については、ナーガ・ラージャ自身は男性神に限定されていますが、やはり龍衆にも女性神は存在しています。ダキニ衆とルドラ衆もこれに準じます。ところが、衛教大神の3神だけは性別が限定されます。まず最高神・衛叉はあなたの精神を反映して、あなたのコラムの領域の性別に準じます。そして移心は父系制に準じて男性神、山巓若はあなたの母系制に準じて女性神です。当然にしてあなたの子供からするとあなたはゲノムの領域に準じて、父親ならば移心、母親ならば山巓若ということになります。それでは衛教の神様である「衛教大神」「十一方格神」(じゅういちほうかくのかみ)、「両角神」(もろづののかみ)の順に説明して、その後に「最勝十一方格祝詞」(さいしょうじゅういちほうかくのりと)の次第を記述いたします。

【衛教大神】(えいきょうおおかみ)

「衛教大神」は唯一無二の自己創出系であるあなたを成り立たせている存在を神として信仰することです。具体的には「コラム」の領域と「ゲノム」の領域とを神格化します。特別に最高神については、偶像を置き、あなたの写し鏡として、あなたの衛教世界の中心の神籬(ひもろぎ)とされます。神の仕え手の場合は、外出時は笏が神籬になります。もちろん、たとえ神籬がなくても常時「衛教大神」はあなたの体内に内在していて、あなたが意識する時にご出現なされます。

貴人(きじん)、神殿本尊「貴人」として「衛叉大明神」(えいさだいみょうじん)

まず「衛教大神」(えいきょうおおかみ)は3柱です。最高神は、神を認識できる、あなたの脳内自我です。いわばコラムの領域の最高崇拝です。そしてその最高神を具体的に偶像化して崇拝する対象が「十一面千手大明神」(じゅういちめんせんじゅだいみょうじん)である「衛迦荼沙阿・幡荷・叉鉢修・羅部斯陀闥・大明神」(エーカダシャ・ムカ・サハス・ラブジャ・だいみょうじん)です。「手天道衛教」とは、最初の手天国家「衛国」の国教であり、且つすべての人を救うための教学理論であり、且つ衛迦荼沙阿幡荷叉鉢修羅部斯陀闥の信仰であるからこそ「手天道衛教」と呼ばれています。つまり2018年7月11日(650掌年)に御鎮座なされた最高神の名称が偶然にして衛迦荼沙阿幡荷叉鉢修羅部斯陀闥であったため、1992年8月(339掌年)建国の「衛国」と1999年4月(419掌年)建学の「衛学」と2018年7月(650掌年)ご鎮座の「衛叉」という3つの必然が重なった事により、ついに手天道衛教は公開されたのです。衛迦荼沙阿幡荷叉鉢修羅部斯陀闥大明神は十一の顔を持っています。ですから手天道衛教の最高神は十一の顔が転じて11の方角の神様です。「衛迦荼沙阿・幡荷」=エーカダシャ・ムカ(Ekadaza mukha)の意味は11の顔を有する者という意味です。続けて「叉鉢修・羅部斯陀闥」=サハス・ラブジャ(Sahas rabhuja)の意味は1000の手を持つ者です。つまり衛迦荼沙阿幡荷の衛と叉鉢修羅部斯陀闥の叉を合わせた「衛叉大明神」の意味は11の方向を守護し、1000の手を有している大明神ということです。だからこそ、衛叉大明神は手天の神様に相応しいのです。何故ならば、あなたを中心に11の方角を守護される神であり、あなたが努力をすれば1000以上もの手天を創造する事ができる神だからです。手天道衛教はあなたを中心として十一の方位を守護します。そしてあなたの手天国家を守護します。十一の方位とは、まずあなたを中核の方位として、東西南北の四方(よも)と北東、東南、南西、西北の四維(しい)に天上と地下とを加えた十方を加えて十一方格です。実はこの「衛叉大明神」の名称の中には衛教二十神それぞれの名称の内の1文字が織り込まれています。それは順に衛教大神の「衛」、迦楼羅・畢婆迦羅の「迦」、鳩槃荼、(荼枳尼)の「荼」、沙羯羅の「沙」、阿修羅・阿那婆達多の「阿」、八幡の「幡」、稲荷の「荷」、德叉迦の「叉」、優鉢羅の「鉢」、和修吉の「修」、緊那羅の「羅」、五部浄の「部」、摩那斯の「斯」、難陀・跋難陀の「陀」、乾闥婆、(楼闥羅)の「闥」です。

ですから、十一方位を守護する手天世界の最高神はもちろん衛叉大明神でなければならないのです。本尊御影は、十一のお顔を有し、尚且つ千の手を意味する相当数の手を有する、たとえば千手観音のような像であるならば、全て十一面千手大明神の像として祭祀することが可能です。衛叉大明神を信仰する全ての人は衛教信者になれます。衛教二十神の配置では、衛叉大明神は、神殿本尊「貴人」として第一番目に北西の方角に祀られるべき手天道衛教の御祭神様です。ここで大切な事をお伝え致します。それは十一面千手大明神である衛叉大明神はあなたの脳内世界の映し鏡であるという事です。ですから十一面千手大明神を信仰する事は自分自身の手天道と自分自身の信仰とを大切にする事そのものなのです。そうして衛教本殿にご鎮座なされる「最勝十一面千手大明神」こそは、数ある十一面千手大明神の中でも、衛叉の中の衛叉なのです。衛教創始教主の私は、サハス・ラブジャ(Sahas rabhuja)をシヴァ(Shiva)神の化身ではないかとも考えています。ですから「貴人」の神格色は紫です。ともあれ、あなたの十一面千手大明神はこの大宇宙の中であなたの手天世界の中心です。

※衛叉大明神はあなたの脳内自我であり、その顕現偶像として十一面千手の姿でご鎮座され、崇拝されます。

天帝(てんてい)、北極星北方守護「天帝」として「移心大神」(いしんおおかみ)

衛教大神の二番目の神様は、「移心大神」(いしんおおかみ)です。移心大神は、始原の命からわが身に至る、父方の全ての祖先と過去のゲノムの崇拝です。衛教創始教主の私の場合、厳密には父からその父たる祖父と父系制によって遡り、吉川元春公から『江家次第』の編者、大江匡房卿から更には天穂日命(あめのほひのみこと)にまで遡る血統から、遂には原始生物ピカイヤから最初の生命体までに至る細くも永い道程です。衛叉の実体が脳内自我でありながら顕現偶像を有する様に、移心の顕現的な信仰対象として蒼天と北極星とが挙げられます。蒼天は天父神として、また北極星は北辰妙見信仰として時に妙見菩薩として崇拝することがあります。

手天道では、移心大神は右手に「降三世」(ごうさんぜ)という「挙手」の印相で顕されます。降三世の印相は、自分に向けると祖先に対する感謝を意味し、向こう側に向けると、その向けられた子孫に対する子孫繁栄を願う意味になります。実は、貴人・衛叉が最高神として定められるまでの永きに亙って、手天道衛教の最高神は移心大神と山巓若体王でした。なので、移心の「降三世」と山巓若の「大官寺」という印相は、神門に向かって行われていたため、天子南面のご配置とは左右逆になっています。ですから上位の移心が右手(めて)に、山巓若が左手(ゆんで)にその手印が結ばれているのです。手天道創成期に作成されたこの降三世の印相のモデルは、漆黒の「蔵王権現」の像の姿勢でした。ですから「天帝」の神格色は黒。衛教二十神の配置では、北極星北方守護の「天帝」として第二番目に北の方角に祀られるべき衛教大神です。実は「天帝」は陰陽師十二天将では「天空」(てんくう)という名跡です。元来、十二天将では最高神に「天一」(てんいつ)という尊称を用いることがありました。ですが手天道衛教ではこの「天一」の尊称は最高神である自我「貴人」と、父系祖先「天帝」、加えて母系祖先「天后」とに等しく用いられるべきであると考えています。つまり陰陽師十二天将での「天空」の名跡を「天帝」に改称して用いているのです。そうすれば父系祖先「天帝」と母系祖先「天后」とが夫婦神であることと、「貴人」が自分自身であることの整合性が保てます。

天后(てんこう)、神門守護「天后」として「山巓若体王」(さんてんじゃくたいおう)

続けて衛教大神の三番目の神様は、「山巓若体王」(さんてんじゃくたいおう)です。山巓若体王は、始原の命からわが身に至る、母方の全ての祖先と過去のゲノムの崇拝です。衛教創始教主の私の場合、厳密には母からその母たる祖母とミトコンドリアDNAを受け継ぐ母系制によって遡り、琳聖太子の母から百済の聖明王の母、そして武寧王の母にまで遡る血統から、遂には同じく原始生物ピカイヤから最初の生命体までに至る細くも永い道程です。山巓若の顕現的な信仰対象として大地と海洋とが挙げられます。大地は地母神として、また海洋は生命の揺籃として時に媽祖神の様な女神として崇拝することがあります。

手天道では、山巓若体王は左手に「大官寺」(だいかんじ)という「挙手」の印相で顕されます。大官寺の印相は、∀(For all)という全称記号(universal quantifier)の形であり、みんなの為に生きる、それが自分の為になる、という互恵的繁栄を願う意味です。つまり∀(For all)は、全ての人々のための宗教であり、またあなたの全ての手天をも慈しむことを意味しているのです。「天后」のモデルは媽祖神であると言われています。「天后」の神格色は紫。衛教二十神の配置では、神門守護「天后」として第三番目に北西の方角に祀られるべき衛教大神です。もちろん陰陽師十二天将でも「天后」です。衛教の最高神である衛教大神はこの「衛叉」、「移心」、「山巓若」の3柱の神の総称です。そしてこの眷属として最初の左手信仰の「宝来山神将」と右手信仰の「岩壁山神将」があり、これは全信徒共通の神将として、仁王の様に神門の方角に配置された神殿の守護であるとご理解下さい。もちろん、両手はあなたの体の一部ですから、日常あなたと運命を共にする実在性があります。また一説によると、媽祖神には左手側に緑色の千里眼将軍が、右手側には赤色の順風耳将軍という2柱の鬼神が仕えているとされています。神門側から天子南面の思想に則ると、東方青房下「東体王宝来山神将」を千里眼将軍に、西方赤房下(南)の「西体王岩壁山神将」を順風耳将軍に比定することができるという考え方もあります。

【十一方格神】(じゅういちほうかくのかみ)

 

次に「十一方格神」(じゅういちほうかくのかみ)を解説します。十一方格神とは天竜八部衆の神様のことです。そして手天道衛教では、天竜八部衆は興福寺八部衆の神様と残りの八大竜王の神様と考えています。興福寺八部衆と八大竜王とを合わせると、沙羯羅竜王神(さがらりゅうおうのかみ)が重複するので15柱の神様になります。つまり十一方格とは、この15柱の神様で十一の方位を守護する考えです。分かりやすく述べると東南西北の四方(よも)とその間の北東、東南、南西、西北の四維(しい)。さらに加えて立体的に上、中央、下を加えると全部で11の方角になります。まとめると、中心核に天地の三方位に加え、東西南北の四方に、神鬼風人の四維の十一方向と表現できます。神門(しんもん)が西北。鬼門(きもん)が北東。風門(ふうもん)が東南。人門(じんもん)が南西です。この15柱の神様であなたの時間を1秒・1日・1年サイクルでご守護いただきます。それでは神殿を配する神門から詳述していきます。

居天(ごてん)、神門守護「居天」として「五部浄神」(ごぶじょうのかみ)

われわれは神門守護として「居天」を祀ります。私は、八部衆では、居天をデーヴァ(諸天部)に比定いたします。そのデーヴァの総称として五部浄(ゴブジョウ)神を信奉いたします。五部浄という名称の由来は、大自在天(だいじざいてん)=摩醯首羅(まけいしゅら)とも称され創造と破壊の神、普華天子(ふけてんし)色彩の神、遍音天子(えんおんてんし)音の神、光髪天子(こうはつてんし)光の神、意生天子(いしょうてんし)コラムとゲノムの神という五柱の阿那含(あなごん)の聖者の集合神であるという意味です。大自在天とはシヴァ神のことで、それ以外の神様も徳の高い神様であるとされています。阿那含とはその清浄な世界から欲界には戻ってはこないことを表しています。つまり、五部浄神は、シヴァ神の神籬(ひもろぎ)であって、欲界に住むわれわれを救済する時には、色界から自我の最高神・衛叉に向けて力を送られるのかもしれません。またシヴァ神から派生した伊舎那天(イシャナ)は伊邪那岐命(イザナギ)に比定され、伊舎那后は伊邪那美命(イザナミ)に比定されています。男神が凪で女神が波とは良くできた神話ですが、この様に国生みの夫婦神であり、三貴子の祖神をも内包する手天道衛教には不思議な威力が確かに存在しています。また、欲界の上にある色界という欲望を離れた清浄な物質世界に住む五部浄神の世界のさらに上には、無色界があるとされています。一説によると五部浄神はその色界と無色界との境の支配者として、閻魔大王にも比定されています。五部浄神のお姿は右手に剣、左手に宝珠を持っておられます。同じく神門には三種の神器が祀られています。中央には神鏡、南面して左側に勾玉、右側に神剣が配置されています。神剣と剣、勾玉と宝珠は一致し、正に五部浄神は神門の御守護として相応しいと思います。また神門には陰陽師十二天将の「貴人」に比定される主祭神「衛叉大明神」と「天后」に比定される母方祖先神の「山巓若体王」が衛教大神として祀られています。以上の理由から「居天」は、衛教大神に次ぐ第四位の神であり、十一方格神のリーダーであり、その神通力の威力は別格です。「居天」の神格色は紫。なお、陰陽師十二天将には「居天」はありません。補足として、北枕は縁起悪くはありません。むしろ「天子南面」の思想に則って神床に頭を向ける北枕、神門枕は正当性があり、推奨いたします。またあなたの今在所で御神床がある部屋以外を寝室となされる場合であれば東枕でも構いません。

※五部浄の神は南面をしていて、善神統合の象徴です。あなたを構成する衛教大神を除くとシヴァ神が常在する衛教二十神の中で最強の神です。またシヴァ神は和御魂の時は再生の神であり、荒御魂の時は暴風神になると考えられています。ですからこの繰り返しにより破壊と再生が起きるのだとされています。転じて人の命をも司る神として最大級の崇拝を集めています。あなたに意識がある時・ない時にかかわらず、五部浄神はあなたを終生ご守護なされる十一方格神の総代首座です。特に方位の季節は極月・正月で、12月と1月がご守護の首座です。

昇龍(のぼりりゅう=黄龍)、天上守護「昇龍」として「阿修羅神」(あしゅらのかみ)

ここから述べる、天上守護、中央守護、地下守護の三方向の御随神様については、陰陽五行説では土德で、季節は土用と呼ばれる四季の変わり目、地理的には中央の天上・平地・地下を掌るとされています。日本神話古事記の世界では、波邇夜須毘古神(ハニヤスヒコノカミ)、波邇夜須毘売神(ハニヤスヒメノカミ)の二神が陰陽五行説で土德に比定され、私は天上守護、中央守護、地下守護はその御随神であると考えます。五行には七曜の「日」と「月」が含まれてはいません。ですから土德の神々の中から日德と月德とを定めなければなりません。土德にはその中心に位置する緊那羅神が相応として、私は日德には天上守護である阿修羅神を、月德には月天である阿那婆達多竜王神を選び定めました。このことについて詳述すると、有名な学説によると阿修羅神像は、中央の合掌に対して最も高い場所にある両腕については左手に日輪(にちりん)、右手に月輪(がちりん)を持ち、その中間にある両腕には左手に弓、右手に矢を持っていたとされています。ですから、厳密に述べると日中に天空にある日德と月德は阿修羅神の守護領域であり、午後から夕方の日德が摩那斯竜王神、夜の月德が阿那婆達多竜王神の守護領域であるということになります。また季節の変わり目として設けられた四維。秋から冬への境である、神門。冬から春への境である、鬼門。春から夏への境である風門。夏から秋への境である、人門。これらの四季と四方を守護する神の事を土公神(どくじん)と言います。更にまた陰陽五行説によると、四神が御守護される方格(ほうかく)の中心に「黄龍」と「麒麟」が存在するとされています。この「黄龍」と「麒麟」との二説を尊重し、天上守護として「黄龍」を祀ります。私は八部衆神では阿修羅(アシュラ)神・(非天)を「黄龍」に比定いたします。なぜならば、阿修羅神は、須弥山の天空を守護する神だからです。「黄龍」は太陽のシンボルです。別名は非天、「昇竜」(のぼりりゅう)です。「黄龍」の神格色は黄色。また、陰陽師十二天将には「黄龍」はありません。仏教では五部浄神が属する諸天部は善神・デーヴァとして描かれ、対して阿修羅神が属する阿修羅衆は悪神・アスラとしてとらえられています。しかし手天道衛教では両者は等しく護法の善神です。この阿修羅のモデルとなる存在は、阿修羅王と称されていて、一般的に羅睺(ラゴ)、婆稚(バチ)、佉羅騫駄(キャラケンダ)、毘摩質多羅(ビマシッタラ)の四王に集約されています。インド神話の中で、このうち毘摩質多羅王には乾闥婆神の娘との間に設けた、絶世の美女である舎脂(シャチー)という娘がおりました。一説によると王はこの娘を羅睺阿修羅王に嫁がせようとしていたところ、デーヴァであるインドラ(帝釈天)から結婚の申し込みを受けたとされています。デーヴァとの婚儀に毘摩質多羅王は喜んだそうです。しかしインドラ(帝釈天)は婚儀を待てずに舎脂(シャチー)を略取凌辱して妻としました。この蛮行を衛教は絶対に認めません。正義の阿修羅神が力のインドラ(帝釈天)と闘争するのは当然です。このことから衛教は、インドラ(帝釈天)を信仰しません。

※阿修羅神は戦いと正義の神です。また天空の神であり、特に午前中に昇る太陽の象徴でもあります。ですから一日の中で日中、特に午前中がご守護の首座です。また日曜日の七曜神でもあります。ですから阿修羅神は日曜日の日中が強運なのです。

麒麟(きりん)、中央守護「麒麟」として「緊那羅神」(きんならのかみ)

次に私は家内区の中心を核と捉え、その守護を核祇とします。核祇は、地上の神である「麒麟」を比定します。「麒麟」は、四神が御守護される方格の中心地に存在するとされており、百獣の王と崇められています。中央に存在するという性質上、「麒麟」は、中央に存在する時は黄色、北方に向かう時は、黒く変化して「角端」(カクタン)。東方に向かう時は、青く変化して「聳弧」(ショウコ)。南方に向かう時は、赤く変化して「炎駒」(エンク)。西方に向かう時は、白く変化して「索冥」(サクメイ)となられます。私は八部衆では「麒麟」をキンナラ(神か人かの意)に比定いたします。キンナラとは緊那羅(キンナラ)神のことを指し示しています。「麒麟」の神格色も黄色。なお、陰陽師十二天将には「麒麟」はありません。興福寺八部衆の緊那羅神像は、よく見ると少し左の方向を向いておられます。十一方格の御配置によるとこれは東、日の出の方角を向いておられます。緊那羅神が朝陽を遥拝なされるこのお姿は、核祇として限られた時間の中から今を守護する神としてここにあることを示されておられます。このことは、衛教の十一方格が最勝であることの証明に他なりません。

※緊那羅神は神と人との間に存在しています。つまり緊那羅神は神と人との間に生まれた半神であり、不老不死の神とは異なり、寿命を持つ存在なのです。ですからあなたの胸中に常に存在して、から今この瞬間をあなたと共に刻み続けて、限りある時間をご守護いただく神様なのです。ただしそのご神徳は、あなたに意識がある時に限られます。麒麟は一般的に1000年生きるといわれています。今この瞬間の連続として、あなたの手天国家が1000掌年続くことを手天道衛教は祈念します。ですから麒麟はあなたの中央守護として最も相応しいと私は考えます。また四神の調整役でもあり、季節の変わり目を四神に告げる役割を持っています。歌唱演奏の神でもあります。ですから緊那羅神は土曜日が終日強運なのです。

降龍(くだりりゅう=黄龍)、地下守護「降龍」として「摩那斯竜王神」(まなしりゅうおうのかみ)

「黄龍」は交竜と同じ音である所から、昇り竜の「黄龍」は、昇る太陽。降り竜の「黄龍」は、沈む太陽で地尊と区別します。ですから地尊の「黄龍」はその名の通り、八大竜王の中から摩那斯竜王(マナスヴィン・ナーガ・ラージャ)を比定いたします。摩那斯竜王神は阿修羅神と互角に戦ったことがあります。ですから摩那斯竜王は天上守護阿修羅と対峙する竜神様です。つまり天上から地上に舞い降りて、あなたを救う竜神様なのです。私は地尊の守護「黄龍」として、まさに相応しいと考えます。別名は日天、大力竜王、「降龍」(くだりりゅう)です。

※摩那斯竜王神は午後に降りながら海の中に沈む太陽の象徴です。ですから一日の中で午後、特に夕方がご守護の首座です。

太陰(たいいん)、地下守護「太陰」として「阿那婆達多竜王神」(あなばだったりゅうおうのかみ)

 阿修羅が天空にて陽であるならば、軒下土中をご守護いただく神様は陰です。阿那婆達多竜王(アナヴァタプタ・ナーガ・ラージャ)は閻浮提、大地を支える大蛇・アナコンダです。ですから私は地尊の守護「太陰」に阿那婆達多竜王神を比定します。「太陰」は八大竜王随一の高い知能を誇る神様です。また「太陰」は月です。夜、天空に昇ることもあります。別名、月天、清涼竜王、阿耨達(あのくだつ)。「太陰」の神格色も黄色。もちろん、陰陽師十二天将でも「太陰」です。

​※阿那婆達多竜王神は高い知能の神です。また大地、地下、墓の神であり、月の象徴でもあることから夜の神ともされています。ですから一日の中でがご守護の首座です。

夜叉(やしゃ)、鬼門守護「夜叉」として「鳩槃荼神」(くばんだのかみ)

また次に私は、鬼門守護として「夜叉」(ヤシャ)を祀ります。夜叉衆は男性がヤクシャ、女性がヤクシニ―と呼ばれています。宮地嶽神社では黄色い厄除け札を神籬(ヒモロギ)とされています。夜叉衆は死者の肉を喰らう悪鬼神であり、また病魔を除く善鬼神でもある両面性を持っています。ですから私は八部衆では「夜叉」をガバンダに比定いたします。ガバンダとは鳩槃荼(クバンダ)神のことを指しています。もちろん、鳩槃荼神は護法善神です。夜叉は薬叉(ヤクサ)とも称されるように、病気を持った状態が正常な状態です。ですから元気がなくなると反対に病気を放出します。元来インドではヴァイシャジャ・グルという医師神があり、中国に至り十二支を融合して十二神将を眷属として、薬師(ヤクシ)と称されるようになりました。そこから世俗的な解釈が発生して薬師と眷属の薬叉は同根と考えられがちです。ですが両者の発音は似ていますが、元来、薬師と薬叉は別系統から生まれた神であるということです。鬼門の方位の季節は初春なので「夜叉」の神格色は陽性の土徳の色として山吹色です。なお、陰陽師十二天将に「夜叉」はありません。

一説によると鳩槃荼神はルドラの従者として死を司る神とされています。方位の季節は早春です。ですから3月がご守護の首座です。

青竜(せいりゅう)、東方守護「青竜」として「沙羯羅竜王神」(さがらりゅうおうのかみ)

東方守護「青竜」は、青い厄除け札を神籬(ひもろぎ)とされ、陰陽五行説では木、季節は春、地理的には川を掌るとされています。日本神話古事記の世界では、久久能智神(ククノチノカミ)が陰陽五行説で木德に比定され、私は、「青竜」はその御随神であると考えます。それではここからは、私が信仰する「青竜」を特定してゆきます。一般的に蛇が神格変化(しんかくへんげ)すると虺(キ)になります。それなので虺には足がありません。そして鯉や金魚など鰭を持つものが神格変化すると蜃(シン)になります。ですから蜃は鰭を有しています。また、蜃は口から蜃気楼を見せる霊気を吐くと言われております。当家の四大金魚(四金蜃)は金蜃(キンシン)に神格変化しておりますが、金蜃は白虎の眷属であるとされています。更に蝙蝠や蜥蜴や鰐など、四足や翼を持つ爬虫類が神格変化すると應(オウ)になります。ですから應は四足と翼を持っています。虺も、蜃も、應も更に神格変化すると蛟(ミズチ)になります。蛟は緑色の龍であり、三爪、四爪、五爪と指の数が多くなるほど位が高くなるということです。そして龍神の尾の先端は火焔鰭に進化しています。最終的にこれら諸々の龍神の上にナーガ・ラージャ(八大竜王)が君臨しているのです。

八大竜王とは、難陀(ナンダ)竜王、跋難陀(バツナンダ)竜王、沙羯羅(サガラ)竜王、和修吉(ワシュキツ)竜王、德叉迦(トクシャカ)竜王、阿那婆闥多(アナバダッタ)竜王、摩那斯(マナシ)竜王、優鉢羅(ウハツラ)竜王の事です。然るに私が崇拝する東方守護「青竜」とは、広義にはこの八大竜王のことを指し示しています。つまり私は、東方守護として青竜(セイリュウ)を祀ります。そして私は、八部衆では、「青竜」をナーガ(八大竜王)に比定します。ただ、十一の方角の内、地尊方、風門方、人門方に関しては八部衆だけでは数量的に守護しきれない現状を踏まえ、また龍に於いて興福寺八部衆では沙羯羅竜王(サーガラ・ナーガ・ラージャ)を比定されていることを尊重いたし、私は東方守護「青竜」に沙羯羅竜王神を比定します。別名、大海竜王。古来、「青竜」の姿は翠色(すいしょく)という青緑色であるとされています。ですが現代社会では青も緑も広く知られる美しい色です。そこで手天道衛教では青と緑とを区別することにしました。私は、大海竜王には海の色が相応しいと思います。ですから衛教では「青竜」の神格色は青です。もちろん、陰陽師十二天将でも「青竜」です。

※沙羯羅竜王神は海および海運の神です。方位の季節は春です。ですから4月がご守護の首座です。また木曜日の七曜神でもあります。ですから沙羯羅竜王神は4月の木曜日が強運なのです。

六合(りくごう)、東方守護「六合」として「和修吉竜王神」(わしゅきつりゅうおうのかみ)

 天下の九頭竜神である和修吉竜王(ヴァースキ・ナーガ・ラージャ)にも固有の尊号をご準備しました。それが吉神の「六合」です。私は八大竜王の中でも、沙羯羅竜王と相性が良い和修吉竜王を同方角にお祀りいたすことにしました。ですから私は東方守護「六合」に和修吉竜王神を比定します。和修吉竜王は、沙羯羅竜王と難陀・跋難陀兄弟とが喧嘩をせぬよう間にご鎮座されます。また野村万之丞氏が復元した伎楽では、和修吉竜王神(ヴァースキ)は迦楼羅神(ガルーダ)が天敵であるので、間に難陀・跋難陀兄弟竜王に仕切って戴く必要もあります。このヴァースキは婆素鶏(バスケイ)とも称され、乳海攪拌というヒンドゥー教における天地創造神話に登場します。乳海攪拌とは、デーヴァの神々が永遠の命を手に入れるためにアスラ衆と協力して、マンダラ山を海に据えて、それにヴァースキを巻き付け、頭の方からアスラが竜王の体を引き、尾の方からデーヴァが竜王の体を独楽の様に引き戻して大海を攪拌したという神話です。その途中に太陽、月、酒、馬、宝石などが次々に現れ、最後に神々の医神がアムリタという永遠の命を得る甘露を持って登場したそうです。私はタウリンが入った甘いドリンクに敬意を込めて「アムリタ」と呼び自ら飲用することによって神々に捧げています。また山にグルグル巻きにされ綱引きされたヴァースキは苦しさのあまり猛毒ハーラーハラを吐き出して全世界が焼き尽くされる危機にみまわれたそうですが、偉大なるシヴァ神がその毒を飲み干して世界を救ったとされています。シヴァ神がニーラカンタ(青黒い首を持つ者)と呼ばれているのはこの事によるのだそうです。別名、九頭竜大神(くずりゅうおおかみ)。「青竜」に準じる「六合」の神格色は水色です。もちろん、陰陽師十二天将でも「六合」です。

※和修吉竜王神は水の神です。5月がご守護の首座です。

勾陳(こうちん)、風門守護「勾陳」として「難陀竜王神」(なんだりゅうおうのかみ)

私は北西を神門(シンモン)、東北を鬼門(キモン)、南東を風門(フウモン)、西南を人門(ジンモン)と称し、四維(シイ)を設置します。麒麟の四方向変化から更に踏み込んで、私は四維のそれぞれに神門「居天」、鬼門「夜叉」、風門「勾陳」・「騰蛇」、人門「大裳」・「般若」を祭祀します。つまり私は風門守護として「勾陳」と「騰蛇」を祀り、まず「勾陳」に八大竜王の首座である難陀竜王神(ナンダ・ナーガ・ラージャ)を比定します。難陀竜王神は毒蛇の王者コブラです。別名、歓喜竜王。元来、「勾陳」と「騰蛇」の職制は方格の中央にありました。しかし衛教ではその中央の職制を「麒麟」と「黄龍」とに定めた為、その職制の名称と役割が筆頭竜王の居る風門の方角に移ってきました。また衛教では青と緑とを区別するため難陀・跋難陀兄弟神が緑色を得ました。私は初夏の季節の方角である風門を表現する新緑の色彩として相応しいと思います。そのため衛教では「勾陳」の神格色は翡翠色に近い黄緑色なのです。もちろん、陰陽師十二天将でも「勾陳」です。

※難陀竜王神は雨乞いの神様です。方位の季節は梅雨です。ですから6月がご守護の首座です。

騰蛇(とうだ)、風門守護「騰蛇」として「跋難陀竜王神」(ばつなんだりゅうおうのかみ)

いくら兄弟神であるとは言え、八大竜王様です。勢い余る兄神の行き過ぎを抑えていただく大切な弟神様です。そこで跋難陀竜王(ウパナンダ・ナーガ・ラージャ)にも「騰蛇」の尊号をご準備いたしました。つまり私は風門守護「騰蛇」として跋難陀竜王神を比定します。跋難陀竜王のモデルもコブラです。別名、亜歓喜竜王(あかんきりゅうおう)。「勾陳」に準じる「騰蛇」の神格色は緑です。もちろん、陰陽師十二天将でも「騰蛇」です。

※跋難陀竜王神は雨乞いの神様です。方位の季節は初夏です。ですから7月がご守護の首座です。

朱雀(すざく)、南方守護「朱雀」として「迦楼羅神」(かるらのかみ)

南方守護「朱雀」は、赤い厄除け札を神籬(ひもろぎ)とされ、陰陽五行説では火、季節は夏、地理的には広い平野を掌るとされています。日本神話古事記の世界では、火之迦具土神(ヒノカグツチノカミ)が陰陽五行説で火德に比定され、私は、「朱雀」はその御髄神であると考えます。まず火の神様のお話しをします。インドでは火の神はアグニ神、その妻はスヴァーハー女神と称されています。それは神へのご供物はアグニ神に食されその祭火で昇華することによって天界に運ばれると信じられていたからです。森を追われ草原に降り立った頃から火を使うことは、人類が手にした最も古い文明の一つと考えられています。つまり、火の神は人と神とをつなぐ重要な存在なのです。スヴァーハーの意味は「幸あれ」であり、神へのご供物が燃やされる時の掛け声です。ですから最勝十一方格祝詞では、その多くの呪文の最後にスヴァーハー女神の名前を唱えて火の神を讃えているのです。「朱雀」はそのアグニ神とスヴァーハー女神との御随神なのです。

次に鳥の神としてのお話しをします。俗説として、およそ翼を持つ百鳥の王は不死鳥であると考えられています。この不死鳥は太平の御代のみにしかその姿を見せない瑞鳥とされ、一般的に鳳凰と呼ばれています。鳳は雄で凰が雌とされ、雌雄一対の神です。この鳳凰とは、「朱雀」の本来の姿であると考えられています。またインド神話では金翅鳥として迦楼羅神をヴィシュヌ神の乗り物とする考えがありますが、衛教はこれを完全に否定します。迦楼羅神はヴィシュヌ神の乗り物ではありません。このことから衛教は、ヴィシュヌ神(那羅延天)を積極的には信仰しません。更に加えて、衛教では伎楽の研究から尊い神である迦楼羅神が飛翔される際には必ず笙の音色を伴うこと、またケラハミという地上の動作には、虫けらを食むという意味から必ず首を前後に振るということまで解明いたしております。南の鳥の神である迦楼羅神は、朱雀大路の名の通り天子南面の思想上重要な神様です。つまり私は南方守護として「朱雀」(スザク)を祀ります。そして私は、八部衆では朱雀をガルーダに比定いたします。ガルーダとは迦楼羅(カルラ)神のことです。迦楼羅神は和修吉竜王神との闘いに勝利したことがあります。然るに私が崇拝する南方守護とは、この迦楼羅神のことを指し示しています。「朱雀」の神格色は赤。もちろん、陰陽師十二天将でも「朱雀」です。興福寺八部衆の迦楼羅神像の場合、迦楼羅神は大きく左を向いています。十一方格の御配置によるとこれは東、日の出の方角を向いておられます。盛夏と火の神さまが、日の出の方角を向いておられることは、緊那羅神と相まって、衛教の十一方格が最勝であることの証明に他なりません。

※迦楼羅神は未来を教えて下さる神です。また火と鳥の神でもあります。方位の季節は夏です。ですから盛夏である8月がご守護の首座です。また火曜日の七曜神でもあります。ですから迦楼羅神は8月の火曜日が強運なのです。

大裳(たいも)、人門守護「大裳」として「德叉迦竜王神」(とくしゃかりゅうおうのかみ)

俗称で裏鬼門と呼ばれる方角の守護に私は「大裳」(タイモ)を祀ります。「大裳」は「天帝」北極星に仕える高級文官です。別称、毒視大裳(どくしたいも)。理知的な大裳は、六大力士と鬼神たちが相撲する様を掌るに德叉迦竜王(タクシャカ・ナーガ・ラージャ)が最も相応しいと考え、人門守護「大裳」に私は德叉迦竜王神を比定します。德叉迦竜王神の「德」の字は十と四と一の心と記します。これは合計すると15柱となられる十一方格神の心を表現しているのです。また裏鬼門の守護とされる「七面天女」は德叉迦竜王神の娘とされています。人門の方位の季節は初秋なので「大裳」の神格色は陰性の土徳の色として茶色です。もちろん、陰陽師十二天将でも「大裳」です。

※德叉迦竜王神は衛教大神と十一方格神とを結ぶ高級文官です。また怒りのまなこを向けられた者は死ぬともされています。方位の季節は初秋です。ですから9月がご守護の首座です。

般若(はんにゃ)、人門守護「般若」として「優鉢羅竜王神」(うはつらりゅうおうのかみ)

俗称で裏鬼門と呼ばれる方角の守護に私は「般若」(ハンニャ)も加えて祀ります。サンスクリット語でパンニャは、実相を達観するための根本的な智恵を意味しています。なので人間の知恵を掌る神として優鉢羅竜王(ウッパラカ・ナーガ・ラージャ)が相応しいと考え、人門守護「般若」に私は優鉢羅竜王神を比定します。何故ならば「般若」の別発音が鉢羅(ハツラ)だからです。般若は蛇や鬼面と多く関連付けられています。鬼面の場合にはなぜか女性格になるのが特徴です。別名、青蓮華(せいれんげ)。「大裳」に準じる「般若」の神格色は黄土色です。なお、「般若」(裏鬼門)は「夜叉」(鬼門)の対に創造された職制で、陰陽師十二天将にはありません。

※優鉢羅竜王神は智慧の神です。そうして仲秋の10月がご守護の首座です。

白虎(びゃっこ)、西方守護「白虎」として「乾闥婆神」(けんだつばのかみ)

西方守護「白虎」は、白い厄除け札を神籬(ひもろぎ)とされ、陰陽五行説では金、季節は秋、地理的には大きな道を掌るとされています。日本神話古事記の世界では、金山毘古神(カナヤマビコノカミ)が陰陽五行説で金德に比定され、私は「白虎」がその御随神であると考えます。一般的に霊力を備えた老虎が神格変化すると「白虎」になると考えられています。霊獣の観点から雌雄一対の獅子狛犬にも強い影響を与えています。一般的な龍虎(りゅうこ)という対については、手天道衛教では沙羯羅竜王神と乾闥婆神のことを指し示します。またその眷属は、背羽后護金蜃(せばほうごきんしん)、銘鑪前護金蜃(めろぜんごきんしん)、有里左護金蜃(ありさごきんしん)、富良右護金蜃(ふらうごきんしん)の四金蜃です。つまり私は西方守護として「白虎」(ビャッコ)を祀ります。私は八部衆では、「白虎」をガンダルヴァに比定いたします。ガンダルヴァとは乾闥婆(ケンダツバ)神のことです。然るに私が崇拝する西方守護とは、この乾闥婆神のことを指し示しています。両角の神である、稲荷大神のご眷属神の命婦大神(みょうぶおおかみ)以下、千御燈神将(せんごとうしんしょう)はじめ各狐神様はこの方角から神殿に向かわれることになります。「白虎」の神格色は白。もちろん、陰陽師十二天将でも「白虎」です。

※乾闥婆神は俊敏な神です。また香を食し、酒、楽器演奏、獣、風の神でもあります。方位の季節は秋です。ですから晩秋の11月がご守護の首座です。ですから乾闥婆神は11月の金曜日が強運なのです。

玄武(げんむ)、北方守護「玄武」として「畢婆迦羅神」(ひばらかのかみ)

陰陽五行説によると、北方の守護として四神の「玄武」が存在するとされています。北方守護「玄武」は通常は黒色なのですが、宮地嶽神社では紫の厄除け札を神籬(ひもろぎ)とされ、陰陽五行説では水德、季節は冬、地理的には小高い丘を掌るとされています。日本神話古事記の世界では、弥都波能売神(ミズハノメノカミ)が陰陽五行説で水德に比定され、私は、「玄武」はその御髄神であると考えます。つまり私は北方守護として「玄武」(ゲンム)を祀ります。通常「玄武」は「龍亀」(ロングイ)もしくは「亀蛇」(きだ)の姿で顕されますが、北方大地を支配するニシキヘビでもあります。また「玄武」が主に北方の地上、地下を守護されるのに対して、「衛教大神」である「天帝」・移心大神はその天空・北極星の方角を守護されることになります。私は、「玄武」を八部衆では、ドゥルガーの化身ヴィカラーラに比定いたします。ヴィカラーラとは、興福寺八部衆の中の畢婆迦羅(ヒバカラ)神のことです。然るに私が崇拝する北方守護とは、この畢婆迦羅神のことを指し示しています。では十一方格神が出揃ったここで四神と興福寺八部衆についてまとめてみます。四方を中国式に表現すると東南西北となります。これは太陽の一日の動きを表現しています。日の出は東から起こり、太陽は南中して、西に沈む。そして夜、北の正中にて休み、また東から日の出は起こる。つまり興福寺八部衆像はこのことを東は沙羯羅竜王神であり少年像、南は迦楼羅神で青年像、西は乾闥婆神で壮年像、そして北は畢婆迦羅神であり老年像という様に太陽の一日を人の一生として顕現されているのです。また、これに準じて衛教ではさらに天地でも同様に人の一生を表現するため、天上の阿修羅神は少年像、核祇の緊那羅神像は青年像、地下の摩那斯竜王神像と阿那婆達多竜王神像は髭を蓄えた老年像として顕現いたします。加えて衛叉大明神がシヴァ神の化身の場合、「玄武」はパールヴァティーの化身なのかも知れません。転じて「玄武」はあなたの配偶者の守護神です。「玄武」の神格色は黒。もちろん、陰陽師十二天将でも「玄武」です。

※畢婆迦羅神は破折の神です。方位の季節は冬です。ですから厳冬の2月がご守護の首座です。ですから畢婆迦羅神は2月の水曜日が強運なのです。

【両角神】(もろづののかみ)

ここまで、衛教大神3柱と、十一方格神15柱を解説しました。あと残り2神で、衛教二十神(えいきょうふたそかみ)の完成です。残りの2神を「両角神」(もろづののかみ)と言います。それは「黒角」(こっかく)・「八幡大神とその眷属である鬼神衆」=「八幡神群」と、「朱角」(しゅかく)・「稲荷大神とその眷属である狐神衆」=「稲荷神群」です。「両角神」は「今在所」の神であって、あなたの進むべき方向を示してくださる神様です。この「八幡神群」と「稲荷神群」がそれぞれ統合されて「楼闥羅大神」と「荼枳尼大神」という、インドに由来の2柱の大神として祀られ、これを以て衛教二十神です。

黒角(こっかく=両角)、神門守護「黒角」として「八幡神群」=楼闥羅大神(はちまんしんぐん・ルドラおおかみ)

 まず「八幡神群」(はちまんしんぐん)楼闥羅大神(ルドラのおおかみ)について説明いたします。当初は黒い男鬼神がTerima kasihとご発声されながら宮地嶽神社の護神符に入られた経緯から、応神天皇誉田別命神(おうじんてんのう・ほんだわけのみことのかみ)を主祭神に、その母神である、神功皇后息長帯比売命神(じんぐうこうごう・おきながたらしひめみことのかみ)と、比売大神(ひめおおかみ)とを統合して「八幡」(はちまん)としてご祭祀いたしておりました。比売大神については諸説ありますが、有力な説によると、卑弥呼や宗像三女神に比定されています。八幡神の紋章は「三つ巴」であり、この八幡三神を奉る紋章であると私は理解いたしておりました。ところが、もしも「三つ巴」がトリムルティを表現しているとしたならば、ここにもブラフマー(梵天)、ヴィシュヌ(那羅延天)、シヴァ(大自在天)が介在しておられるのかも知れないと信じるようになりました。引き続き「八幡神群」について説明いたしますと手天道衛教は宮地嶽神社のご由緒に従うため、さらに「八幡」のご随神様として「勝村大神」(かつむらおおかみ)、と「勝頼大神」(かつよりおおかみ)という兄弟神も斎奉します。さらにその下に「鬼神衆」(きしんしゅう)が続きます。

 鬼神衆は、おん鬼神様(おにがみさま)と呼ばれ「黒鬼神」(くろきしん)と「四方の鬼神」(よものきしん)で成り立っています。冒頭で述べたこの「黒鬼神」は、Terima kasihとご発声なされた事から「照間香椎神」とも呼称されています。また黒い榊の実にお姿を変えられ、最勝十一面千手大明神を御神床まで道案内された神様でもあります。「黒鬼神」については衛教創始教主である私の命を救ってくださった深い御恩があるにもかかわらず、いまだに謎の多い神様です、また別の時には「刃向かうは矛先」とお怒りになられ、暴風神ルドラとしての神通力を示された事から現在以下の様に考えられています。「黒鬼神」様の和御魂(にぎみたま)が「照間香椎之神」であり、その荒御魂(あらみたま)が「叛鉾先之神」(はむかうはほこさきのかみ)であると。時にアスラとも呼ばれるルドラ神とは、シヴァ神の前身であり且つまたシヴァ神の本来の性質を顕している存在なのです。「四方の鬼神」(よものきしん)は神門が白露鬼神(しろぼくろきしん)で天燈鬼に、風門が力火鬼神(りょっかきしん)で風神に、鬼門が石橋鬼神(いしばしのきしん)で雷神に、人門が鉄田村鬼神(くろがねたむらのきしん)で龍燈鬼にそれぞれ比定されています。さらには六大力士とその配下に更に多数の鬼神を随えています。「八幡」の神格色は黒です。

※八幡神群は、あなたのご自宅地域の氏神としての八幡宮であり、また楼闥羅(ルドラ)神というインドの神様である場合もあります。八幡神は、勝負の神です。また凶中の者を守護すると言われています。

朱角(しゅかく=両角)、神門守護「朱角」として「稲荷神群」=荼枳尼大神(いなりしんぐん・ダキニおおかみ)

 次に「稲荷神群」(いなりしんぐん)荼枳尼大神(ダキニのおおかみ)について説明いたします。「稲荷」(いなり)の出自については渡来人である秦氏の氏神で、農耕の神であるというものが一般的です。荼枳尼(ダキニ)の神として信仰されることも寺院では流行っています。一方神社である伏見稲荷大社によると御祭神様は、宇迦之御魂大神(うかのみたまのおおかみ)、佐田彦大神(さたひこのおおかみ)、大宮能売大神(おおみやのめのおおかみ)、田中大神(たなかのおおかみ)、四大神(しのおおかみ)の五神を一宇相殿にご祭祀されているということです。宇迦之御魂大神は建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)の子とされており、女神です。佐田彦は猿田彦(さるたひこ)とも称され道祖神として有名です。また猿田彦大神は、天手力男神(あまのたじからおのかみ)と同一視されています。天手力男は、天岩戸で天照大神の御手を掴まれた神様です。次に、大宮能売大神は天宇受売命(あめのうずめのみこと)とも称され天岩戸の前で踊った女神とされています。別名を猿女(さるめ)とも称されていて、猿田彦と夫婦神とされています。田中大神は田の神とも称され、日本全土の田畑の区画にそれぞれ宿られる農耕の神様です。四大神(しのおおかみ)については謎が多い神様ですが、春若年神(はるわかとしのかみ)、夏高津日神(なつたかつひのかみ)、秋比売神(あきひめのかみ)、冬年神(ふゆとしのかみ)という四季の神を合祀した神様であるという説が有力視されています。個人的には内容から、陰陽五行説と四神に通じるものと考えています。さらにその下に眷属として「狐神衆」(きつねがみしゅう)が続きます。

狐神衆は、「命婦大神」(みょうぶおおかみ)と呼ばれています。「命婦」は霊狐という狐神です。この狐神は神殿に住み、衛教では神殿の中に雨蛙に姿を変えた「京極狐神」(きょうごくのこしん)が居て、狛狐は神殿に向かって右側(東方)が「古々賀狐神」(ここがこしん)で左側(西方)が「津々賀狐神」(つつがこしん)です。この「命婦」の近くに多数のお狐様が付き従い、またその下には、「随蛙」(ずいわ)と呼ばれる雨蛙を複数随えています。「稲荷」の神格色は「朱色」です。

※稲荷神群は、あなたのご自宅地域の農耕神としての稲荷神社であり、また荼枳尼(ダキニ)神というインドの神様である場合もあります。稲荷神は商売の神です。また吉中の者を守護すると言われています。

 【最勝十一方格祝詞】

それではこれから以下に「最勝十一方格祝詞」(さいしょうじゅういちほうかくのりと)の次第を通しで記載いたします。まず衛教で「最勝」の文字を冠する場合は、公益性を有することを意味します。その上で「最勝十一方格祝詞」を奏上することを「方格を切る」と言います。「方格を切る」とは、「衛教祝詞」から「御触れ」もしくは「配賽」までの一連の「四方拝」(八方除け)の所作を指し示しています。

 

【最勝衛教祝詞】(衛教祝詞)※神棚(御神床)に向かい奏上。

「諸人(もろびと)に移心大神ありて、その移心大神が山巓若体王と相睦(あいむつ)ぶ時、人に命が宿る。

移心大神は始原(しげん)の命よりわが身に至る、父方の全ての血統の道程(みちのり)の神であり、山巓若体王は始原の命よりわが身に至る、母方の全ての血統の道程の神である。

移心と山巓若とは原始同源にして、且つ亦全ての人間は移心と山巓若との融合により誕生する。

そうして生まれ来たりし自分自身を中心とする衛教世界の最高神として衛叉大明神が存在し、衛叉、移心、山巓若の三神を総称して衛教大神という。

禍いありて生まれざる命は、その家人(いへびと)を助け、

幸いにして生まれ来たりし者は、その生まれざりし命の存在を忘れず、

また身罷(みまか)られし全ての者を日々尊び。またうつつの世に共に生きる者を敬い。

諸人の右手(めて)には岩壁山神将が、

左手(ゆんで)には宝来山神将が宿りて相遊び、

神将、本統、正護、眷属が正しく努むる手天道を勤(いそ)しめ。

さすれば衛教大神は汝と汝の家族と共にある。」(一拝)

【衛教祝詞・現在語訳】

全ての人には父系制の神が実在していて、その父系制の神が母系制の神と有性生殖することによって人間の生命が発生する。

父系制の神イシンは、最初の生命体からあなたにまで至る、父方の全ての血統の継代を指し示す神であり、母系制の神サンテンジャクは、最初の生命体からあなたにまで至る、母方の全ての血統の継代を指し示す神です。

イシン神とサンテンジャク神とは最初の生命体を同源とする神さまであり、すべての人間はイシン神とサンテンジャク神との融合によって誕生する。

そうして誕生したあなた自身を中心とする衛教世界の最高神としてエイサが存在していて、エイサ、イシン、サンテンジャク、の三神を総称して衛教大神と称する。

事情があって誕生しなかった生命は、その家族を助ける。

幸福にして誕生できた人間は、その誕生しなかった生命のことを忘れないで、

また逝去したすべての親族を毎日供養します。

また現在同じ時代に生きる人々をも尊重します。

すべての人の右手には岩壁山神将が宿って、

すべての人の左手には宝来山神将が宿って手天道を行い、

神将、本統、正護、眷属が秩序と規則に従って相関する手天道を行いなさい。

そうすれば、衛教大神はあなたとあなたの家族と共存共栄する。

※【解説】来世を認めない手天道衛教がなぜ、生まれることが出来なかった命と、先に死去した家族やご逝去なされた知人達をここに崇拝するのでしょうか。それは実在しなくとも、あなたの最高神である衛叉大明神の中に認識され続けるからです。つまりこの供養行為は、あなたが意識する限り続けられるのです。

 

【最勝衛叉大明神祝詞】(衛叉祝詞)

「天降(あまふ)りし、宮地(みやじ)の御札、二降(ふたふ)りて、

風無きに揺る、奇(く)しき御札(みふだ)は。

しこうして、黒き鬼神の、打ち笑い、

照間香椎(てるまかしい)と、仰(おほ)せ給うる。

両角(もろづの)の、神は御札に、入り居りて、

世に御教えを、広めよと宣(の)る。

神多(かみさわ)に、八十神並(やそかみな)めて、廻(もとはし)して、

豊寿(とよほ)ぎ踊り、札に入りぬる。

両角(もろづの)の、神が導く、十一面、

千手の主(あるじ)ぞ、叉鉢修羅部斯陀闥(サハスラブジャ)。

殊分(ことわ)きて、ここに十一方格の諸神を随(したが)へたる衛叉大明神を

神殿本尊「貴人」(きじん)としてお鎮め奉り、

この手天道衛教最勝の十一面千手大明神ぞはや、

最上(もがみ)の神とぞ畏(おそ)れ敬い畏(かしこ)み奉る。恐惶謹言頓首頓首(きょうこうきんげんとんしゅとんしゅ)。

オーン・エーカダシャ・ムカ・サハス・ラブジャ・アヴァローキテーシュバラ・ヴァジュラ・ダルマ・フリーヒ。」(一拝)

【衛叉祝詞・現在訳語】

 神棚から降ってきた、宮地嶽神社の御札は、二回私の許に降って来て、

風もないのにぶらぶらと揺れていた、不思議な御札だなぁ。

しばらくして、黒い鬼神が夢の中に現れて高笑いしながら、

一言トゥリマカシイと仰った。

両角の神さまは、この御札に入って行きながら、

世間に衛教を広めよと告げられた。

これにより多くの、数えきれない程の神々が、この御札の周りをグルグルと周り囲んで、

喜び祝い、御札の中に入っていく。

両角の神さまが導く、十一面で、

千手の最高神こそは、サハスラブジャである。

特別に、ここに十一の方位からあなたを守る神々を従えたる衛叉大明神を、

神棚の本尊である「貴人」としてご鎮座いただき、

この手天道衛教で至上の神である十一面で千手の神さまこそは、

最上級の神さまであると畏敬の念を重ね持って、御祭祀申し上げます。

恐れ謹みながら地にぬかずいて申し上げます。

聖なる十一面で千手の、救世の、声に出して祈られし神は、武器と、信仰と、ご加護を

※【解説】、地主神である「両角」が、現在の御神床に最高神の十一面千手の像をご鎮座なされたのですよ、という内容です。復習になりますが最後の一文にあるエーカダシャ・ムカ(Ekadaza mukha)とは、11の顔を有する者であり、サハス・ラブジャ(Sahas rabhuja)とは、1000の手を持つ者です。そしてアヴァローキテーシュバラ(Avalokitesvara)は観音菩薩を意味しています。何となくアヴァローキタは「しっかりと見守っていますよ。」という、我々に対する神のメッセージであり、シュバラは「声に出して呪文を唱えるのですよ。」という教えの様に聞こえます。つまり衛叉大明神は仏教的に言えば千手千眼観世音菩薩であり、また衛教は衛叉大明神としてアヴァローキテーシュバラを仏教から解放しているのです。もしも衛叉神を千手観音と同一視すれば、その眷属は二十八部衆であり東西南北と上下の6方位にそれぞれ4部、そして北西、北東、南東、南西に各1部眷属が配置され28部となるのですが、このことはその10の方位に更に核祇という中心点を加えてエーカダシャ・ムカが11の方位の守護を意味する事の証明に他なりません。

 また28という数字は中国で定められ、日本に伝来しました。元来、インドでは「ナクシャトラ」という27の星宿の分割法がありました。それが中国に伝わり、二十八宿になったことと相乗的に影響しあって28になったのであって、二十八部衆よりも古くから存在する天竜八部衆に由来するわれわれの十一方格神は正当性を持っています。以下にその理由を列挙いたします。まず、われわれの「移心大神」は「北極紫微大帝」(しびたいてい)に相応です。これは「北極星」信仰です。「宝来山神将と岩壁山神将」は「密迹金剛士」(みつしゃくこんごうし)に相応です。これは「金剛力士」です。更に「四方の鬼神」(よものきしん)の「風門力火鬼神」は「風神」に「鬼門石橋鬼神」は「雷神」に相応です。決め手は、阿修羅王のひとり毘摩質多羅(びましったら)が自分の美しい娘、舎脂(シャチー)を帝釈天に略取されてしまって以降、両者は永らく戦争をしたという神話から、われわれは帝釈天(インドラ神)を二十神に迎えてはいません。これは「非インドラ」信仰です。以上の通り、「衛叉」を最高神としながら、十一方格神の中では「大自在天」=シヴァ神を最高位に置く考え方を私に導き続けてくださった神様が照間香椎(てるまかしい)の神でした。なので、現段階での推測ですが、手天道衛教を公開に導いてくださった「照間香椎神」は、バラモン教の「ルドラ神」ではなかったかと考えています。

 衛叉神のご配置の場所ですが、衛教伽藍(P92・93)では本堂の背面中央にご鎮座されます。十一方格神は八角円堂にご配置なされますので、本堂ではその前後に他の神はご鎮座なされません。ご家庭の御神床の場合は二十神がご一緒にご配置なされますので、衛叉神はその御神床の方格中央にご鎮座なされ、その背面中央に五部浄神が、衛叉神の直前に緊那羅神がご着陣なされます。共にできれば南向きか風門向きでお願いいたします。

 

【移心大神祝詞】※移心大神祝詞のみ北極星に向かい奏上。

「吾は大将軍天一太白北極星北方守護「天帝」として移心大神を奉らん。この父なる天の恵みに感謝。ここに始原の命よりわが身に至る、父方の全ての血統の道程を移心大神として畏れ敬い畏み奉る。恐惶謹言頓首頓首(きょうこうきんげんとんしゅとんしゅ)。」(一拝)

【移心大神祝詞・現代語訳】

私は大将軍、天上一輝く北極星の方、北方守護「天帝」として移心大神をご祭祀いたします。この父系制神による天にも勝る恩恵に深く感謝申し上げます。ここに最初の生命体から私にまで至る、父系制の直系の祖先すべてを移心大神として畏敬の念を重ね持って、御祭祀申し上げます。

※【解説】、移心大神は、蒼天・北極星(天父神・北辰妙見)信仰に由来しています。

【属星拝礼】※属星拝礼のみ北斗七星に向かい奏上。

御神床神殿に向かい一礼再拝二拍一礼。

北極星に向かい一礼再拝四拍一礼。

子歳の場合は「貪狼星(トンロウショウ)」=ドゥーベ

丑歳の場合は「巨門星(コモンショウ)」=メラク

寅歳の場合は「禄在星(ロクゾンショウ)」=フェクダ

卯歳の場合は「文曲星(モンゴクショウ)」=メグレス

辰歳の場合は「廉貞星(レンジョウショウ)」=アリオト

巳歳の場合は「武曲星(ムゴクショウ)」=ミザール

午歳の場合は「破軍星(ハグンショウ)」=アルカイド(ベネトナシュ)

未歳の場合は「武曲星(ムゴクショウ)」

申歳の場合は「廉貞星(レンジョウショウ)」

酉歳の場合は「文曲星(モンゴクショウ)」

戌歳の場合は「禄在星(ロクゾンショウ)」

亥歳の場合は「巨門星(コモンショウ)」

をそれぞれ7回唱える。一礼。※7つの星を往復すると十二支に対応できる。

一礼、再拝。

「賊寇之中過度我身(ぞっこうじちゅうかどがしん)

毒魔之中過度我身(どくまじちゅうかどがしん)

毒氣之中過度我身(どくけじちゅうかどがしん)

毀厄之中過度我身(きやくじちゅうかどがしん)

五鬼六害巡中過度我身(ごきろくがいじゅんちゅうかどがしん)

五兵口舌之中過度我身(ごひょうこうぜつじちゅうかどがしん)

厭魅咒詛之中過度我身(えんみじゅそじちゅうかどがしん)

萬病除愈所欲随心、急急如律令。(まんびょうじょゆしょよくずいしん、きゅうきゅうにょりつりょう)」一礼。

【属星拝礼・現代語訳】

外敵が攻めて来る災いは、必ずわが身を通過させてください。

健康を害するものは、必ずわが身を通過させてください。

毒となる成分も、必ずわが身を通過させてください。

破壊や災難も、必ずわが身を通過させてください。

土用の5方向と互いに相剋する地支の害も、必ずわが身を通過させてください。

五種類の武器の使用と口論も、必ずわが身を通過させてください。

かけられた呪いも、必ずわが身を通過させてください。

あらゆる病苦は除かれ、希望通りになりますように。

よろしくおねがいしましたよ。

 

※【解説】、属星拝礼の文言は、大江匡房卿の『江家次第』の巻二十の、民間による四方拝の原文を抜粋しています。属星拝礼は、北斗七星に由来しています。神代七代(かみよななよ)もこの北斗七星に由来しています。また属星拝礼文中の「五」の数字は、カシオペア座5星と陰陽五行説(火・水・木・金・土)と地神五代(ちじんごだい・天照大神、忍穂耳命、邇邇藝命、火遠理命、鵜葺草葺不合命)とに由来しています。

 

【山巓若体王祝詞】※神棚(御神床)に向かい奏上。

「吾は神門守護「天后」として山巓若体王を奉らん。この母なる大地の恵みに感謝。ここに始原の命よりわが身に至る、母方の全ての血統の道程を山巓若体王として畏れ敬い畏み奉る。恐惶謹言頓首頓首。」(一拝

【山巓若体王祝詞・現代語訳】

私は神門守護「天后」として山巓若体王をご祭祀いたします。ここに母系制神による大地にも勝る恩恵に深く感謝申し上げます。ここに最初の生命体から私にまで至る、母系制の直系の祖先すべてを山巓若体王として畏敬の念を重ね持って、御祭祀申し上げます。

※【解説】、山巓若体王は、大地・海洋(地母神・媽祖)信仰に由来しています。

 

【十一方格拝礼】日拝は1回。御神託は7回。

「吾は神門守護「居天」(ごてん)として五部浄神を奉らん。急急如律令。ナマハ・サマンタ・ブッダーナーン・イシャーナ・ヤマーヤ・スヴァーハー。

また吾は天上守護「昇龍」(のぼりりゅう=黄龍)として阿修羅神を奉らん。急急如律令。ナマハ・サマンタ・ブッダーナーン・ラナンラタト・バラン・タン。

また吾は中央守護「麒麟」(きりん)として緊那羅神を奉らん。急急如律令。オーン・ハサナーン・ヴィハサナーン・スヴァーハー。

また吾は地下守護「降龍」(くだりりゅう=黄龍)として摩那斯竜王神を、また地下守護「太陰」(たいいん)として阿那婆達多竜王神を奉らん。急急如律令。オーン・メーガーシャナーヤ・スヴァーハー。

また吾は鬼門守護「夜叉」(やしゃ)として鳩槃荼神を奉らん。急急如律令。オーン・ヤクシャヤ・クンバーンダヤ・スヴァーハー。

また吾は東方守護「青竜」(せいりゅう)として沙羯羅竜王神を、また東方守護「六合」(りくごう)として和修吉竜王神を奉らん。急急如律令。オーン・メーガーシャナーヤ・スヴァーハー。

また吾は風門守護「勾陳」(こうちん)として難陀竜王神を、また風門守護「騰陀」(とうだ)として

跋難陀竜王神を奉らん。急急如律令。ナマハ・サマンタ・ブッダーナーン・ナンダー・ウパナンダ・ヨーホ・スヴァーハー。

また吾は南方守護「朱雀」(すざく)として迦楼羅神を奉らん。急急如律令。オーン・ガルダヤ・アグナイェ・スヴァーハー。

また吾は人門守護「大裳」(たいも)として德叉迦竜王神を、また人門守護「般若」(はんにゃ)として優鉢羅竜王神を奉らん。急急如律令。オーン・メーガーシャナーヤ・スヴァーハー。

また吾は西方守護「白虎」(びゃっこ)として乾闥婆神を奉らん。急急如律令。オーン・ヴィシュダ・スヴァラ・ヴァーヒニ・スヴァーハー。

また吾は北方守護「玄武」(げんむ)として畢婆迦羅神を奉らん。急急如律令。オーン・ビカラーラヤ・ドゥルガーヤ・スヴァーハー。」

「けだしここに十一方格の諸神、相い集い相い遊ぶこと、誠にめでたく嬉しきことかな。」(一拝)

 

【祓詞奏上】

「畏けまくもかしこき伊弉諾の大神(一拝)が筑紫の国の日向の橘の小戸のあわぎはらにて禊ぎ祓えたまえし時になりませる祓え戸の大神たち。(一拝)

 大神たちの広き厚き御恵(みめぐみ)を辱(かたじけな)み奉り、高き尊き神教(みおし)への随(まにま)に、直き正しき真心もちて、誠の道に違(たご)う事なく、負い持つ業(わざ)に励ましめ賜い、家門(いへかど)高く身(み)健(すこ)やかに世のため人のために尽くさしめたまい、大神たちの恩頼(みたまのふゆ)をかが降らせませ(一拝)と拝(おろが)み奉りあげ、わが身わが家族わが眷属に降りかかる、まがごと、罪、穢れあらんをば、祓え給え、清め給え、守り給え、幸(さきわ)くたもうことを、たいらけく、やすらけくきこしめせと、かしこみかしこみもまおす。」(拝礼)※祝詞の文字表記には諸説があります。

「吾は十九番目の神として黒角(こっかく)八幡神群をご祭祀奉らん。急急如律令。ナマハ・サマンタ・ブッダーナーン・ヴァハ・オーン・アラタンノウ・フーム・スヴァーハー。」(一拝)

 

【稲荷祝詞奏上】

「掛巻(かけまく)も恐(かしこ)き、稲荷大神(一拝続ける)、命婦大神の大前に、恐み恐みも白(まお)さく。(一拝直る)

朝(あした)に夕(ゆうべ)に勤しみ務(つと)むる家の産業(なりわい)を緩(ゆる)ぶ事無く怠(おこた)る事無く、彌(いや)奨(すす)め奨め賜ひ、彌助けに助け賜ひて、家門(いへかど)高く令吹興(ふきおこさしめ)賜ひ、堅磐(かきわ)に常盤に命永く、子孫(うみのこ)の八十連属(やそつづき)に至るまで、茂(いか)し八桑枝(やぐわえ)の如く、令立槃(たちさかえしめ)賜ひ、家にも身にも狂神(まがかみ)の狂事(まがごと)不令有(あらしめたまはず)過犯(あやまちおか)す事の有らむをば、神直日大直日(かむなほいおおなほい)に見直聞直座(みなほしききなほしまし)て、夜(よ)の守り、日(ひ)の守りに守幸(まもりさくはえ)賜へと恐み恐みも白(まお)す。」(拝礼)※祝詞の文字表記には諸説があります。

「吾は二十番目の神として朱角(しゅかく)稲荷神群をご祭祀奉らん。急急如律令。ナマハ・サマンタ・ブッダーナーン・キリカク・スヴァーハー。」(一拝)

 

【朝餉の御触れ】(朝食前)

Om Tatpurusay Vidmahe​ Mahadeway Dhimahi Tanno Rudrah Prachodayat.

「オーン・タップル・サーヤービッマヘーン・マハーデーワーヤディーマヒーン・タンノー・ルッドラハッ・プラチョーダヤー。オーン(低い位置で持笏)・ナーマ(顔の前で持笏)・シヴァーヤ(両手を伸ばして持笏)。」※オーン・ナーマ・シヴァーヤのみ3唱。

※顔の前で持笏し以下を奏上する。「衛教大神よ(衛叉大明神よ、移心大神よ、山巓若体王よ)、十一方格神よ、両角の神よ、偉大なるこれらの衛教二十神よ、朝餉の支度が整いました(これから朝餉の支度を整えます)。全神ご出座お願い致します。直会でございます。本日も一日、どうぞ宜しくお願い申し上げます。」(一拝)

「全神反転、わが身に宿り給え。」

※右回りでぐるりと神様を囲み、その笏を自分の頭上に一回、右肩に一回、左の肩に一回近づけて翳す。一礼の後、右手に持笏し一時停止。(一拝)

※外出時は即、笏を携帯する為の準備に移る。

 

※【解説】これはシヴァマントラです。1日の始まりの最勝十一方格祝詞の締め括りにシヴァ神を讃えるのには意味があります。まず最高神自我である衛叉大明神の名称であるサハス・ラブジャはシヴァ神の異名であると言われています。次に五部浄神の中心神格である大自在天摩醯首羅の名称であるマヘーシュヴァラもシヴァ神そのものであるとされています。そして楼闥羅大神と讃えるルドラこそは、シヴァの神性の源泉とも言えるシヴァ神の前身です。つまりシヴァ神は、衛教大神、十一方格神、両角神の全てに通じてその中心に存在し、大いに讃えるべき偉大なる神格だからです。

【配賽六度】(御神託時)

「謹みて衛教二十神に問いて曰く。○○すること如何?」と称し、毎回右回りで神様を囲み、その笏を賽子の上に二回翳してから、都合6回、賽子を振り、奇数の場合・陽(―)偶数の場合・陰(--)として下から上に積み上げます。下から順に初爻、二爻、三爻、四爻、五爻、上爻と呼称します。そしてその場合奇数・偶数の記号の右側に、実際に出た賽の数字を書いてゆきます。まず、最初の配賽の数字を見て、その数字がこの神事時点での時間の流れを顕していますので、仮にその数字が6だった場合は一番上の上爻の右側の数字に注目します。この場合時間的な流れとしては、もうこの願いやお祓いは完成期にあることも示唆しています。例えばその数字が4であった場合、四爻がこの御神託の主爻となります。主爻とは、今度はこの神事全体の位(グレード)、成果のレベルを顕しています。もしも初爻が1だった場合はこの神事全体の位(グレード)を定めるため、特別に7回目の配賽を行い、そこで出た数字が御神託の主爻になります。なので、そこで再び1が出た場合は、歴史的流れも始まったばかりであるし、現在の位(グレード)自体も一番低い位置と判断します。まとめると初爻の数字がこの御神託の時間的な位置を顕していて、その初爻右の数の段の数の爻で2度目に配賽された数字がこの御神託全体のグレードを顕します。初爻の数字が1の場合のみ最後の7回目に全体のグレードを決定​する配賽を行います。

 結果は、64卦から判定。

場合によってはお礼の「神楽」奏上。

以上が「最勝十一方格祝詞」の次第です。

この最勝十一方格祝詞から導き出される八卦は上下2段(8の二乗)により64卦で、前述のとおり64という数字は衛教で重要視され、フェンスターと呼ばれています。手天道衛教の紀元節は1964年6月4日でもあります。また、核酸の塩基配列であるコドンの種類も64です。

 

【解説】私は、四神を方位除けに最適な神と考えました。結果として、私は四神の起源がインドの天竜八部衆にあることを知りました。そして私は、毎日、笏を持って祈祷する内に、神々の真意を知りたいと思うようになりました。そこで私は、笏を翳して神々の意向を得るのに、賽子と六十四卦が最適であると判断しました。ここで、大切な人生を賽子に託すのかと思われる方もおられることでしょう。私が賽子を選んだ理由は、老若男女問わず誰にでも簡単に6つの目で陰陽と六爻を判別することができるからです。またその結果を64卦によって判断するのにも根拠があります。それは、『易経』が、五経の筆頭に置かれる儒教の経典であり、かつ歴史上最も系統的にまとめられた占いの方法でもあり、賽子とも相性がよいからです。当然にして御神託を頂戴するには必ず何某かの占いの方法を用いなければなりません。さらに私は、神々の意向を得るために特別な神代文字を捧げることによって、自らの御神託を得る行為を続ける内にこの方法が本当によく当たることを充分に確認致しました。その上でついには、多くの人々にご活用頂きたいと思うようになったのです。だから科学に寄り添いながら倫理立国を目指す衛教は、その最勝の方法として儒教に由来し、簡単で、よく当たる配賽六度を用いているのです。簡略型として、「最勝衛教祝詞」と「朝餉の御触れ」を一日1回奏上するだけでも御利益は得られます。また何もしなくても信仰さえすれば、あなたは立派な信者です。

 

 【小結】

 小結として、手天道衛教はあなたの宗教です。本尊である衛叉大明神はあなたの脳内自我であり、且つあなたの手天道とあなたの信仰心の象徴です。つまり、手天道衛教ではまずもってあなた自身が倫理ある心を持った人間であることが最も尊ぶべきことなのです。それはあなたに宗教心がなければ神を信仰することもないからです。ですから衛叉が至尊神であることは必定です。その上にあなたの誕生に至った父系と母系のすべての祖先を、その最初の生命体に到るまで信仰します。それが移心大神と山巓若体王です。これが、あなたの人生にとって、まず第一に衛叉、移心、山巓若の三神を崇めるべきであるという大切な条理なのです。そして十一方格神は、あなたとあなたの手天国家を中心として時間と11の方角をご守護いただく目的で、古来伝承される天竜八部衆(興福寺八部衆神と残りの八大竜王神)陰陽師十二天将などを中心に選び抜かれた最勝の方格守護神なのです。中でも、五部浄神こそは宇宙規模での神将・正護世界の統括者であるところが重要です。もちろん、最勝十一方格祝詞は神秘の領域の一つであり「精神世界の文化」です。その中でわれわれは手天道衛教にとって最強と考えられる「四方拝」(八方除け)を、諸学の中から真摯に選択しながら創造したのです。この教学の要諦は、あくまでも手天道を実践する者を主体的に守護するための宗教理論であることは言うまでもありません。そしてこの手天道衛教の宗教理論を完成へと導いて下さったのが両角神であり、畢竟、衛教二十神に毎日祈りを捧げながら、あなたは人生を神話にして生きてゆけるのです。

 この最勝の衛教二十神と共に生活するわれわれ「神の仕え手」は、『手天道衛教正典』と『笏』を祈祷の時の必需品として携帯しなければなりません。最後にその事を説明いたしこの章の末尾とさせていただきます。祖先崇拝である移心大神と山巓若体王の2柱の神の場合は手天の印相で顕せます。しかし自分自身の手天世界全体を具現化した衛叉大明神と十一方格神の場合はその神籬としての偶像崇拝が主であり、また両角神に至ってはその姿が見えません。そこでこれらの衛教二十神必須の神籬として常に祈祷の時には『手天道衛教正典』と『笏』を携帯する必要があるのです。

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